2017年6月27日火曜日

河野瑤 短歌 ひめくり 2017夏

(河野瑤の自作短歌です。)

花散ったあとの五月は青過ぎて逃げかくれする息さえできない

永遠に続く音楽などなくて梅雨入りの日の原価計算


郵便配達ではないな 雨音に足音まじる病欠の午後


雨おとの骨董市で語りつぐノッテイングハムのまやかしの薔薇


うたごえがかなしい国の水面には紫陽花色が染みついていた


向日葵の束をかかえて地下鉄に乗る人がいる梅雨があけた日


本箱で窓がかくされその裏は校庭らしい二年めの夏


書きおえたあともしばらく鳥達は詩の形して夏空にいた


湾が見える方角に行くことにした水曜の朝のシマ猫と僕


漆黒に百日紅散る夢をみて電話の声をたしかめる朝


早逝の幼馴染が夢にきて見知らぬ祭りに誘おうとする


ここだよね めちゃくちゃ楽しかったよね 花束置いて立ち去った人


もうだめになってしまった八月のポオトレイトにずぶ濡れの犬



(初出)
歌誌「かばん」2017年6月号、「みずつき6  2017初夏」、かばん関西オンライン歌会